ESJ56 一般講演(口頭発表) G2-03
*齊藤修(早大・高等研),宮崎卓(相模原市立博物館)
日本では1970年代から90年代にかけて,地域開発の一環としてゴルフ場やスキー場の建設が大規模に進められた.80年代後半からのバブル経済期には,ゴルフ場会員権は投機対象として人気を集め,数千万円で取引きされた.その結果,全国には2,400を超えるゴルフ場と約700のスキー場が整備された.しかしながら,90年代初頭のバブル経済崩壊後は,ゴルフ場会員権価格の下落や余暇活動の多様化により,ゴルフ場をはじめとするリゾート施設は厳しい経営を強いられており,倒産数が増加しているだけではなく,なかには廃業閉鎖する施設もある.また,国全体の人口減少に伴うゴルフ競技者人口の縮小により,今後は閉鎖に追い込まれるゴルフ場がさらに増えていくと見込まれる。
そこで本研究では,今後増加が見込まれる閉鎖ゴルフ場の管理のあり方を検討するための基礎資料を得るため,2005年春から閉鎖中の群馬県内の廃ゴルフ場を対象として,コースの概況調査と植生調査を実施した。概況調査では,ティ,フェアウェイ,ラフ,グリーン,バンカー,歩経路等の各ホールの構成要素ごとに,現在での植生の状態を把握した。その結果,ゴルフ場内の草地・芝地全体がイノシシによる土壌撹乱の影響を受けていること,イノシシによる撹乱が少ないところではハイコヌカグサが優占する群落を形成しているが,撹乱が強いところではヒメスイバ,アキノウナギツカミ,タデ類(イヌタデ,ハナタデ,オオイヌタデ等)の被度が大きくなること,ゴルフ場周辺の森林に接するホールでは林縁に近いところでミズキ,クマシデ,ミズナラなどの実生が定着しつつあること,個体数は多くないがコース内に植栽されたヒマラヤスギなどの樹木の実生が見られること,ホールの要素によって放置後の植生に差異があることを確認した。