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ESJ56 一般講演(口頭発表) G2-06

豊川における流下有機物の炭素安定同位体比の流呈変化の要因について

*赤松史一(土木研究所),小林草平(土木研究所),中田和義(土木研究所),中西哲(土木研究所),尾嶋百合香(土木研究所),天野邦彦(土木研究所)


沿岸海域における富栄養化、有機物堆積は、底層の貧酸素化を招き、底層を利用する生物に深刻な悪影響を与えるため、水産業などで大きな問題となっている。沿岸海域では、河川から供給される有機物と海洋で生産された有機物が複雑に混じり合っており、有機物の過剰な供給とそれに伴う底層の貧酸素化の問題を解決する上で、有機物の起源・特性を明らかにすることが必要となっている。

本研究は、愛知県東部に位置する豊川を対象に、河川を流下する有機物の主要生元素である炭素に着目した。流下有機物の炭素構成の流呈変化を評価するため、流下有機物、礫の付着物、河川水を定量採集し、有機態、無機態の炭素安定同位体比解析を行った。

流下有機物のδ13Cは、-15.6 ‰から-27.5 ‰の間で変動し、中流部で高く、上流よりも下流の方が低い値を示す傾向があった。付着物のδ13Cは、-9.0 ‰から-25.8 ‰の間で変動し、流下有機物のδ13Cと有意な正の相関があった。下流部における流下有機物のδ13Cは、-26‰前後の低い値を示したが、付着物のδ13Cも-25‰前後と陸上植物由来炭素のδ13C(約-28‰)に近い値を示した。河川水中の溶存無機態炭素濃度は、上流から下流にかけて上昇しており、そのδ13Cは、-8.1‰から-12.4‰へと低くなっていた。溶存無機態炭素の濃度上昇と同位体比低下が、下流部の付着物のδ13Cの低下の要因になっている可能性がある。炭素安定同位体比で評価した豊川の流下有機物の炭素構成は、流呈によって異なっており、中流域で付着物の寄与が大きいことが明らかになった。


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