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ESJ56 一般講演(口頭発表) H1-06

干潟形状と塩生植物フクドの繁殖の関係

*荒木悟(島根大・汽水域研セ),國井秀伸(島根大・汽水域研セ),陶山俊一(総合技研)


干潟の断面形状と塩生植物の生存・繁殖の関係を、フクド(ヨモギ属)を例に調べた。太田川河口域(広島市)の沿岸には、標高(T.P)0.4〜1.5mの範囲に二年草のフクド・ハマサジ群落が発達している。T.P 0.4〜1.3mは緩い勾配の斜面部、T.P 1.3〜1.5mは殆ど勾配がない平坦部である。干潟地面の標高や勾配は、種子の流出・漂着の起こりやすさに影響する可能性がある。また、低い位置の個体ほど満潮に伴う浸水時間は長くなる。これらの要因は、個体密度や成長、繁殖に影響すると考えられる。2006年の春、実生は平坦部に多く出現した(平坦部で320〜1100/平米、斜面部で14〜89/平米)。2008年2月に土壌を採取したところ埋土種子は平坦部に遍在していたので、実生が平坦部に多い理由は、平坦部の方が種子が流出しにくい、または漂着しやすいためと考えられる。一方、2006年に発芽した個体の2007年花季(秋)の生存率と開花率は斜面部の方が高かった。このため、発芽2年目での開花個体数は平坦部(0〜17/平米)と斜面部(3〜17/平米)で同程度になった。平坦部では(1)先行するコホートと同齢のコホートの密度が高いため、込み合い効果で発芽後の生存・成長が阻害された、または(2)大潮の前後しか浸水しない高さなので、上流から流されてきたヨシなどの残骸が、小潮の期間中、植物に覆いかぶさったまま残存することが多く、生存・成長が阻害されたといった可能性が考えられた。2006年の秋、結実率はT.P 0.4〜0.8mの領域(約20%)とT.P 1.3〜1.5mの領域(約30%)で有意に異なった。フクドは風媒花であるため、浸水時間が長い個体は(1)受粉可能な時間が短い、または(2)花粉の流出が起こっているという可能性が考えられた。


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