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ESJ56 一般講演(口頭発表) H1-09

小笠原諸島固有種オガサワラボチョウジ(アカネ科)の二型花柱性とその繁殖 :ポリネーターシフトによる片方向への送粉

*渡邊謙太(沖縄高専), 加藤朗子, 岩崎貴也, 小早川三輪,菅原敬(首都大・牧野標本館)


一般に海洋島の植物では外交配型の性表現が有利とされているが、異型花柱性の存在はあまり知られていない。最近の調査から海洋島である小笠原諸島に固有のボチョウジ属(アカネ科)2種が二型花柱性である可能性がでてきた。本研究ではこのうちオガサワラボチョウジ(Psychotria homalosperma)の形態的・機能的性表現の実態とその進化的背景を探るために、形態計測と交配実験、訪花昆虫と自然結果率の調査、および分子系統解析をおこなった。

その結果、花形態には短花柱花と長花柱花の二型がはっきりと識別された。交配実験からは強い自家不和合性が確認され,また同型花間では不和合的であるが,異型花間では高い結果率が認められた.これはこの植物が形態,そして機能的にも二型花柱性であることを示している.

花は白く細長い筒状(長さ約1.5~3cm)で芳香があり、本来口吻の長いガ類による送粉に適応していると考えられる。しかし、今回の現地調査ではガ類の訪花はほとんど確認されず、かわりに外来種であるセイヨウミツバチが花粉を利用するために訪花していた。セイヨウミツバチは長花柱花の花筒の奥に隠れているメシベに触れることが難しいため、短花柱花から長花柱花への片方向の送粉を引き起こしていることが予想された.兄島・父島・母島での自然結果率は,2年間ともすべての島で長花柱花の方が約1.7倍〜38倍も高かった.これは、実際野外では片方向への送粉が起こっていることを示唆している.

分子系統解析の結果、オガサワラボチョウジは太平洋のボチョウジ属のグループに属することがわかった。近縁種にも二型花柱性がみられるため、おそらく二型花柱性の祖先種が小笠原諸島に移入したのだろうと考えられる。


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