ESJ56 一般講演(口頭発表) H1-12
*保原 達(酪農大環境システム),大園享司(京大生態研)
沖縄本島北部の亜熱帯林における林床では、白色腐朽菌類による落葉の漂白化がみとめられる。これまでの研究により、この漂白した部分では漂白していない部分に比べ落葉中のリグニン分解が卓越することが明らかとなってきた。本研究では、こうしたリグニン分解性菌類による漂白化が土壌中の窒素動態とどのように関わっているかについて調べた。調査地である沖縄北部の亜熱帯林では、有機物層がほとんどないため、まず最も有機質なA層およびミミズの糞塊を採取し、実験室に持ち帰って培養実験により現地土壌の窒素無機化特性を調べた。その結果、A層では無機化が大きかったが硝化活性は低く、ミミズの糞塊では無機化とともに硝化が高くみとめられた。次に、落葉の窒素無機化特性について調べるため、最も優占するスダジイ、2番目に優占するイジュ、あまり優占しないがBleachのある落葉が多くみとめられるヤブツバキ、の3樹種を対象として、落葉サンプルを採取した。サンプルは、リターバック実験により分解後6ヶ月ほど経った落葉から選定し、落葉からBleachとNon-Bleachを等量ずつパンチで切り取って培養し、窒素無機化特性を調べた。その結果、スダジイとイジュではBleachがNon-Bleachに比べ窒素無機化が有意に高く、一方ヤブツバキではBleachとNon-Bleachともに窒素無機化はほとんどみとめられなかった。すなわち、この森林に優占する2樹種については、漂白部における窒素無機化が促進されていることが示された。このことから、この森林ではリグニン分解性菌類による落葉の漂白化が窒素無機化の促進にはたらいている可能性があると考えられる。