ESJ56 一般講演(口頭発表) I1-01
*井手玲子,小熊宏之(国立環境研究所)
地球規模の気候変動の予測とその影響の検出の重要性が増し、植生をはじめとする生態系の長期観測と、その変化の検出が求められている。従来、植生の変化に対して衛星リモートセンシングによる広域での観測が行われてきたが、精度の向上とそのための地上における検証が必要とされている。そこで本研究では、全国各地の国立公園に設置されているデジタルウェブカメラの約7年分の画像を解析することにより、各地の森林、草地などの自然生態系の季節変化および経年変化を調べ、フェノロジーの把握を試みた。
解析は、環境省インターネット自然研究所(http://www.sizenken.biodic.go.jp/)で公開されている画像を使用し、サロベツ原野、羅臼、裏磐梯、尾瀬、乗鞍岳、大山、ヤンバルなど全国の様々な植生タイプを対象とした。2002年から2008年まで毎日撮影されたjpeg形式画像ファイルから、対象とする植生部分のRGBデジタルカウントを抽出し、植生のグリーンネスを表す2G_RBi(Richardson AD. et al., 2007)などの指標を算出した。
その結果、それぞれの地点において積雪や融雪、展葉、紅葉と落葉などの季節変化が指標値の変動として認められた。さらにこれらの変化時期の年による偏差、台風による影響や植生の経年変化も、指標値から確認できた。一方、カメラレンズの汚れや劣化による画質の低下など継続的な観測を行う上で問題点があり、キャリブレーションの必要性が明らかになった。今後、撮影方法や品質管理の規格を統一し、多地点で定点観測を展開することにより、ウェブカメラ画像は生態系の長期モニタリングのための安価で簡便な方法として有効に活用できると考えられる。