ESJ56 一般講演(口頭発表) K1-02
*中尾龍太(横浜国大・環),松田裕之(横浜国大・環)
近年、ニホンジカの大発生が全国的に問題になっている。世界自然遺産である屋久島でもヤクシカが増加し、その食害により森林や林床植物の構造が変わりつつある。そのため、屋久島では許容可能なヤクシカ個体数と植生の状況における調査がされてきた。*1前者は、ヤクシカ個体数管理に伴い個体数密度の違いによる3域別管理が提案され、低密度の南部を重要な保全管理計画地として検討された。*2後者は、ヤクシカの食害が原因で絶滅の恐れがある種があることが報告されている。*3しかし、実際に植物の個体数変動から将来の減少を予測したものではない。そこで本研究では、局所的な視点にたってヤクシカの食害から保全対策が急がれる種の検討を目的とし、局所的スケールでの各植物の絶滅リスクの比較より保全すべき種の選定を試みた。また、それらの種との種間関係を定性的に評価することを試みた。
屋久島の南部に位置する小花山と天文の森を調査地とし、それぞれ1973年と2005年の植生データを用いて、既存研究*2・3からヤクシカの食害を原因として絶滅が危惧される植物とヤクシカに好まれている種を対象に累積局所絶滅リスクを算出し比較した。そして、その地域における保全対策が急がれる種を特定することを試みた。また、偏相関分析による植物種間の連動関係を確認し定性的な関係性を明らかにすることを試みた。発表では数理モデルによる解析結果について議論する。
*1 矢原徹一.環境省環境改善技術等開発推進費プロジェクト報告会2007.11.16.
*2 太田碧海.横浜国立大学大学院環境情報学府修士論文2007.
*3 自然環境研究センター.屋久島における生物多様性の維持機構の保全に関する研究報告書2006.