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ESJ56 一般講演(口頭発表) K2-07

ブナを利用する植食性昆虫群集の地理的変異

*中村誠宏,稲荷尚記,日浦勉(北大苫小牧)


マクロエコロジーにおける中心課題の一つは、植物?昆虫の相互作用が地理的にどう違うのか?ということである。総説では食害度は低緯度にいくほど高くなるという報告があるが、これは多くの論文を集計した結果であるために様々な植物種を扱っており、また統一的な調査手法を用いたものではないという問題を含んでいる。日本に広く分布するブナは葉面積が北東から南西に向かって小さくなる緯度勾配があることが知られている。そこで、ブナの北限の黒松内(北緯42度)と南限に近い椎葉(北緯32度)にある林冠ジャングルジムを使って林冠部に生息する植食性昆虫の摂食機能群(咀嚼性、ゴール性、潜葉性)と葉形質(LMA、窒素、CN比)について調査を行った。

緯度勾配は摂食機能群により異なり、咀嚼性昆虫の食害度は高緯度から低緯度にいくほど低くなるが、反対にゴールの密度は高くなる。一方、潜葉性昆虫の密度には明確な傾向は見られなかった。また、食害度は窒素量とLMA(葉厚)とに負の相関がみられ、ゴールの密度はLMAとに正の相関がみられることが分かった。本研究からブナの葉形質の緯度勾配がそれを利用する各摂食機能群の分布や密度を規定する大きな要因となることが示唆された。その結果、ブナ林冠部を利用する植食性昆虫群集の地理的変異が生じると考えられる。


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