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ESJ56 一般講演(口頭発表) L1-03

外来種トウネズミモチの侵入・成長に対する人為的撹乱の影響

*伊藤千恵,藤原一繪(横浜国大・院・環境情報)


トウネズミモチは中国原産の外来種で、大気汚染等に耐性があることから、戦後街路樹、公園、学校などに植栽されてきた。現在、植栽地から逸出し、都市において分布拡大しており、特に都市域の森林群落には多くの実生個体が確認されている。一方、外来種の侵入が成功するかは環境によって異なることから、都市域の森林群落タイプによる、トウネズミモチの侵入のしやすさや実生個体の成長に関する相違が明らかになれば、優先的に対策を行うべき地点が特定できる。そこで、トウネズミモチがどのような森林群落に侵入・成長し、その森林群落がどのような環境に成立しているかを明らかにすることを目的とする。

調査は、横浜市鶴見区北部の住宅街に残存する林分で行い、林縁から林内に5×5mの方形区を林分サイズに応じて設置し、方形区内に出現したトウネズミモチの個体数、サイズを測定した。また、植生調査により種組成を把握するとともに、過去の林分形態、現在の撹乱状況、林縁からの距離、林分の 面積、形状、近接性を方形区ごとに求めた。

種組成によるタイプ分けの結果、調査区は4つのタイプに分けられ、1:シュロ・アオキ、2:照葉樹林構成種、3:二次林構成種、4:路傍 雑草・植栽種がそれぞれ特徴的に出現していた。トウネズミモチは、全てのタイプで確認されたが、個体数はタイプ4に多く出現しており、それらは現在も撹乱があり、調査区から300m以内に林分の多いタイプであった。個体サイズおよび成長量は、タイプ2で小さく、それらは過去および現在も人為的撹乱が少ないタイプであった。このことから、トウネズミモチは、現在も撹乱があり周辺に林分がまとまっていると侵入・分布拡大しやすく、過去および現在の撹乱が確認される地点では比較的成長が良いことが示された。


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