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ESJ56 一般講演(口頭発表) L1-06

小笠原の新規侵入地におけるオオヒキガエルの餌メニュー

*岸本年郎(自然研)八巻明香(横浜国大院・環境情報)・森英章・高橋洋生・戸田光彦(自然研)


北米南部から南米北部が原産のオオヒキガエルBufo marinusは、オーストラリア、ハワイ、西インド諸島等へ、害虫防除の目的で意図的に導入されたものの、各地で在来の小動物等に影響を与える侵略的外来生物となっている。日本でも外来生物法による特定外来生物に指定されている。小笠原諸島においては、父島に1945年、母島に1974年に導入された経緯をもち、父島では全島に広く分布するが、母島では島南部の南崎地区へはほとんど侵入していなかった。

ところが2007年に、母島南部の南崎における唯一の安定的な淡水域である蓮池において、本種の繁殖が確認された。繁殖を防ぐため2008年2月に池をフェンスで囲うとともに、池周辺や遊歩道に出現する個体を捕獲する防除を開始し、6月までに幼体・成体を含めて82個体を捕獲した。本研究では、本種の新規侵入地での餌メニューを明らかにするため、それらの個体の胃内容物について、可能な限り種レベルでの分析を行った。2月、3月に捕獲された個体には胃内容を持たないものが3割程度認められたが、4月から6月はすべての個体から胃内容物が確認された。同定分析の結果、オガサワラモリヒラタゴミムシ、オガサワラアオゴミムシ(以上CR+EN)、コガネカタマイマイ、オガサワラヤマキサゴ(以上VU)、ムニンツヅレサセコオロギ(NT)をはじめとする、いくつものRL掲載種や固有種が捕食されていることが明らかになった。特に、オガサワラアオゴミムシは研究者の度重なる探索にも関わらず過去10年以上も確認記録がなく、絶滅が懸念されていた種であった。なお、侵入後時間の経過した地域での胃内容物からは、RL掲載種や固有種の出現は極めて少ない。既侵入地ではこのような種が絶滅したか激減したものと考えられ、その要因にオオヒキガエルの捕食圧があったことが示唆される。


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