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ESJ56 一般講演(口頭発表) L2-05

あがりこ型樹形を持つケヤキ林の林分構造と形成過程

*鈴木和次郎,菊地賢(森林総研)


樹幹を地上数メールとで伐採し、そこからの萌芽で多数の樹幹を立ち上げ、伐採利用を繰り返す施業とその結果生み出される特異な樹形(台伐り萌芽樹形=ポラード)は、広葉樹ではブナの「あがりこ」、針葉樹では「株スギ、台スギ」などを代表例として、日本各地、多様な樹種で見られる。しかし、今日、そのような台伐り萌芽による利用形態は失われ、特異な樹形のみが残存するに過ぎない。こうした日本型ポラードの形成過程を明らかにすることは、日本の森林の利用史と個々の樹種特性を考える上で興味深い。福島県郡山市の磐梯熱海地区には、河川沿いの急傾斜地に2m位置で台伐りされ多数の萌芽幹からなる「あがりこ」型樹形のケヤキ林が存在する。現在、この異様な樹形のケヤキ巨木群は保護林の指定を受けているが、その形成過程については明らかにされていない。そこで、この林分の林分構造とその形成過程につき調査を実施し、若干の考察を加えたので報告する。あがりこ型樹形のケヤキ林は、砕石が堆積する平均斜度が35度にもおよぶ急傾斜地に成立する。あがりこ型樹形のケヤキの根元直径は胸高直径90〜180cmで、地上2〜2.5mの位置で台伐りされ、その位置から3〜12本の萌芽幹が発生していた。萌芽幹の幹齢は80〜90年で、ほぼ同時期に伐採萌芽したものと考えられた。ケヤキの萌芽性はきわめて高く、伐採に対しては、樹皮に潜む多数の休眠芽から側枝を発生するのみならず、伐採部の形成層からカルスを形成、不定枝を発生させることが出来る。当地域は、冬季の積雪が30cm以下で、このような台伐りが雪上伐採の結果とは考えられず、むしろ、急傾斜地で、皆伐による土砂災害を回避し、ケヤキの萌芽更新を活用した薪炭利用の結果と推察された。


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