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ESJ56 一般講演(口頭発表) L2-07

アオサギの集団繁殖地での植物への撹乱とその後の遷移:植物種の生態的特性を考慮した解析

*上野裕介(北大院・水産), 野田隆史(北大院・環境科学院), 堀正和(瀬戸内水研)


遷移における種組成の変化は、しばしば空間的に異なっている。この原因の一つに、空間的な撹乱強度の違いがある。撹乱強度の違いは遷移初期の種組成に影響し、遷移初期の種組成は出現種の生態的特性に依存してその後の種の住み着きに影響する。このため撹乱強度の違いは、出現種の生態的特性を時空間的に変化させていると考えられる。

森林の樹冠部にコロニーを形成するアオサギは、林床へ大量のフンを落とす。フンの落下量が多い場所ほど、林床植物のバイオマスや種数は少ない。そこで本研究では、コロニー放棄前に林床へ落下したフンの量およびコロニー放棄後の経過年数の違いによって、出現種の生態的特性がどのように変化するのかを明らかにすることを目的とした。

調査は、北海道厚岸町で繁殖コロニー内外の10地点で放棄前後6年間に行った。解析では、8つの生態的特性(植物高、分散距離、開花時期、耐陰性、世代時間、生活型の違い、栄養繁殖を行うかどうか、種子の重量)に着目し、出現種を生態的特性の違いによってグループ分けした上で、各グループの出現状況がコロニー放棄前のフンの落下量およびコロニー放棄後の経過年数の違いと最も一致する生態的特性の組み合わせを調べた。

その結果、栄養繁殖を行うかどうかと種子重量の違いが、種組成の変化を最もよく説明していた。コロニー放棄前にはフンの落下量の多い場所で、栄養繁殖を行う種のうち小型の種子を持つ種が出現せず、栄養繁殖を行わない種は種子重量に関わらず少なかった。コロニー放棄後にはフンの落下量の多い場所で、栄養繁殖を行う種はほとんど住み着かなかったのに対し、栄養繁殖を行わない種のうち小型および大型の種子を持つ種が住み着いた。これらは、栄養繁殖を行うかどうかが種の住み着き速度に影響し、種子重量が種子の生産数と生残率に影響することで生じたと考えられる。


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