ESJ56 一般講演(口頭発表) L2-08
*窪山恵美,藤原一繪(横国大・院・環境情報)
都市化による森林の開発は生育地の狭小化・孤立化をもたらし,林内構成種数の減少や種組成の変化に影響する.その中でも孤立林周辺環境の変化や周辺緑地からの隔離は種組成の質の変化を引き起こすとされているが,都市域から郊外域にかけて広い地域を対象とした研究は少ない.都市域と郊外域において近年の種組成の変化を比較し,林内に及ぼす影響を明らかにできれば林内構成種の保全に適用できると考えられる.本研究では特に保全が必要であると考えられる関東地方の残存照葉樹林において,都市域から郊外域にかけて網羅的に調査された既存文献を参考に,近年30年間の変化に着目し,都市化による周辺土地利用の変遷にともなう林内構成種への影響を明らかにすることを目的とした.
調査地は関東地方(茨城県・千葉県・埼玉県・東京都・神奈川県)の照葉樹林105プロットを対象とした.
残存している照葉樹林において1970〜1980年代にかけて行われた植物社会学的植生調査より,現在においても残存している照葉樹林を特定し,同様の方法で追跡調査を行った.調査地点は過去の文献に記載された斜面方位,傾斜,標高,高木層の樹種,地図,文章などからほぼ同一地点を特定した.
調査プロットは非孤立林と孤立林に分け,さらに孤立林を周辺土地利用情報を用いてクラスター分析により4つのグループに区分した.その結果,都市域では緑化・園芸種および照葉樹林構成種の増加が見られた.一方,郊外域や非孤立林においては照葉樹林構成種の増加が見られ,遷移が進行していることが考えられた.
以上のことから植物社会学的植生調査が行われるような森林のコア部においても都市域では園芸植栽種が増加し,一方,郊外域では通常の遷移が進んでいると結論した.