ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-003
*志津庸子,大塚俊之 (岐大・流研セ)
冷温帯落葉樹伐採後の高木性の先駆林はミズナラやカンバ林が成立することが知られている.高木性先駆林が成立するまでの攪乱直後約10年に種構造が変化するとの報告があるが,その群落構造の変化,競争機構についての知見は少ない.本研究では落葉樹皆伐後7年経過した幼齢林における5年間の群落構造変化と主要構成種の特性から初期遷移のプロセスを明らかにした.岐阜県高山市郊外に位置する皆伐後成立した幼齢林において,7年目から11年目までの群落動態について調査した.調査は調査区内(10m×20m)の樹高1.3m以上の全個体について種の同定をおこない,毎年,胸高直径(DBH)と樹高(H)を測定,生残を確認した.また,胸高断面積合計と本数密度でそれぞれ優占種判定をおこない,優占種となった9種について枯死率,新規加入率,DBHと樹高の相対成長速度を求めた.群落全体の胸高断面積合計は7年目から11年目にかけて約7.0m 2 /ha増加した.種数,多様度H’は大きな変化が見られなかった.優占種9種について,ノリウツギの死亡率がもっとも高く28.5%/yrであり,加入率21.5%/yrを上回った.ノリウツギは幹の入れ替えが激しいが,全体では本数密度を年々減らしていた.優占種の平均相対成長速度は樹高についてシラカンバ,ダケカンバ,ウダイカンバの順に高く,DBHについてシラカンバ,ダケカンバ,コミネカエデの順に高かった.また,ノリウツギの相対成長速度が樹高,DBHともにもっとも低かった.本林分では優占低木種であるノリウツギの樹高成長が低く,幹本数が減少していることから衰退傾向であった.一方で高木種であるカンバ類の樹高成長が高く,群落上部を優占していることから種の移り変わる段階であると考えられた.