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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-007

屋久島における温度環境と植生分布の関係

*瓦井秀憲,大澤雅彦(東大院・新領域)


屋久島は九州以南の最高峰(宮之浦岳 1935m)であり、亜熱帯の低地部から冷温帯上部に至る生態系が標高傾度にそって配列し、世界でも類まれな貴重な生態系が形成されている。また、生態系の分布だけでなく、気候特性の地域性も多様であることが知られている。しかし、深刻な問題となりつつある地球温暖化の進行により、今後気候が大きく変動する恐れがある。温度は植物の成長を左右する重要な要素の一つであり、それゆえ温度と植生の関係を調べることは気候変動に伴う森林生態系の変化を予測する上で重要である。しかし、植生帯の境界を決定づける温度条件に関する研究例は少なく、特に屋久島の山岳地帯に関してはほとんど分かっていないのが現状である。そこで、本研究では、屋久島東部に標高別に9つの調査区を設置し、植生調査及び環境調査を行い、調査区に設置した温湿度データロガーの結果と比較することにより、1)どのような温度条件が植生の分布を決定づけているのか、2)地形のような環境条件が植生の分布にどのような影響を与えているのかを明らかにし、今後の気候変動に伴う森林生態系の変化の予測を大きく前進させることを目的とした。

調査の結果、標高750m付近を境界として上の標高で針葉樹が優占し、下の標高では常緑広葉樹が優占する傾向が明瞭に現れた。この付近の温度条件は常緑広葉樹の耐性限界とされる条件とは大きく異なるものであり、また、この標高を境に気温の日較差などの気象条件が大きく変化することが分かった。この標高付近は河川の本流・支流が分岐する位置に相当し、河川の構造によって局地風が変化する傾向が認められた。この局地風の変化が気象条件の変化の一因となっていることは十分に考えられる。これらの結果から、河川の分岐によって気象条件の変化がより明瞭となり、この気象条件の違いが植生帯の決定に影響を及ぼしていることが示唆された。


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