ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-008
宮森映理子,宮坂隆文,大黒俊哉,武内和彦(東大院・農),趙哈林,趙学勇(寒区旱区環境工程研)
中国内蒙古では、過放牧や不適切な耕作等により砂漠化が進行している。とりわけ砂地とよばれる地域では、砂丘再活動が引き起こされ植生回復が著しく抑制されている。そのため同地域ではこれまで、植生を回復させるための様々な対策がとられてきた。中でも、灌木や高木の植栽は一般的であり、特に灌木に関してはその「看護効果」がこれまでの研究で指摘されている。高木に関しても「看護効果」に着目した研究はあまり見られないが、植栽された高木によって下層植生には変化が生じると考えられる。また、植栽された植物との位置関係によってもこの下層植生は変化すると考えられる。こうした変化パターンについて把握し、更にそれを灌木植栽・高木植栽の間で比較することは最適かつ効果的な緑化・環境修復技術を選択するうえで重要である。また、当地域は半農半牧地域なのでこの比較の際に植物の放牧利用価値も考慮に入れることも必要不可欠である。以上を踏まえ、本研究では灌木(Artemisia halodendron)・高木(Populus simonii)植栽後約5年経過したサイトと約25年経過したサイトにおいて、樹冠中央部から樹冠外にかけての下層植生や土壌の変化パターンを把握したうえで、植栽樹木・経過年数・地形ごとにそれらの比較をした。
内蒙古自治区奈曼旗において、灌木植栽5年・25年、高木植栽5年・25年の計4サイトをインタビュー等による履歴調査から選定した。初期状態はいずれも流動砂丘であることを確認した。サイト内で砂丘の一斜面を選択し、砂丘上部・中部・下部・丘間低地ごとに植栽樹木3個体ずつの計12個体を対象に樹冠中央からミニトランセクトを設置、8月下旬に植生調査を行った。また、0〜5cmの深さで土壌試料を採取し、理化学性分析を行った。また出現種の牧草等級も文献から調査した。