[0] トップ | [1] 目次

ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-026

伊豆諸島御蔵島における維管束着生植物の垂直分布

*林勇希(筑波大・生物資源),平田晶子・上條隆志(筑波大・生命環境)


維管束着生植物は、日本の照葉自然林の種多様性に関して非常に重要な役割を果たし、絶滅危惧種率も高い。しかし、照葉自然林は非常に少なく、研究は南九州などに限られている。本研究は着生植物の垂直分布パターン、および垂直分布と温湿度との関係を明らかにすることを目的とする。

照葉自然林が広く残存する伊豆諸島御蔵島で、2008年5月と10月に登山道沿いの21地点(標高約50m間隔、224m〜804m)で調査地(25m×25m)を設けた。調査地ごとに、最大直径木および5段階のサイズクラス(胸高直径(DBH)5-10、10-20、20-50、50-100、100-cm)の樹木をサンプリングし、種名、樹高、DBHおよび樹上に出現した維管束植物の種名を記録した。なお、地点によっては、サイズクラスの大きい樹木が存在しない場合もあった。また、温湿度データロガーを8箇所に設置して、5月20日から10月6日にかけて温度および湿度を計測した。

定常的な着生植物として、20種(うちラン科植物4種、シダ植物16種)が確認された。着生植物の種数は樹木のDBHの増加に対して増加する傾向にあった。さらに、調査地ごとの最大直径木の着生植物種数は、中標高域にピークをもつ単峰形の分布パターンがみられた。一方、温湿度については、温度が標高の増加に伴って減少するのに対して、湿度は標高の増加に伴い増加し、頂上部ではやや低下する傾向がみられた。種数について中標高域にピークを持つ分布パターンがみられた要因の一つとして、御蔵島の中標高域がある程度温暖かつ多湿な環境に保たれているためと考えられる。


[0] トップ | [1] 目次