ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-027
*平田晶子,上條隆志(筑波大・生命環境),齊藤哲(森林総研)
維管束着生植物とホスト樹木の相互作用網の構造や特異性は,着生植物群集の維持メカニズムを反映した,群集構造の重要な側面である.2層からなる相互作用網の構造については,相利共生網を扱った研究が多く行われてきた.その結果,相利共生網の多くで,多くの種と結びつき種間相互作用の中心となるジェネラリストが存在し,スペシャリストはジェネラリストの一部と結びつくという非対称な構造がみられることが報告されている.種間関係に制約的な要因が存在することなど,非対称性を生み出すいくつかのメカニズムが提唱されているほか,各種の量に依存した確率論的なプロセスによっても生じることが指摘されている.一方,着生植物とホスト樹木は一般的に片利共生であると考えられている.ホストの提供する資源は間接的であり,単一ではないと考えられることから,両者の相互作用網の構造には相利共生とは異なるメカニズムが働いていることが予想される.そこで,着生植物とホスト樹木の相互作用網の構造の非対称性や特異性を,確率論的なプロセスを再現した帰無モデルの結果と比較することで検討し,群集構造を生み出すメカニズムについて考察した.
相互作用網の非対称性や,着生植物種が維持している相互作用の数(リンク数)は,確率論的なプロセスによって生じる結果と有意な違いはなかった.しかし,一部のホスト樹木については,期待されるよりリンク数の多い種,少ない種が存在した.多くの着生植物に共通した資源を供給しうるジェネラルなホスト種が少ないことが,より頻度依存的な相互関係を生み出している一因として考えられる.また一部のホスト種については,何らかの促進的,制約的性質を備えている可能性があるが,全体の構造に影響を与えるほど強い要因ではないと考えられる.