ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-029
*本岡毅,奈佐原顕郎(筑波大・生命環境)
衛星リモートセンシングによる紅葉・黄葉フェノロジーの広域観測は、環境と植物の相互作用を理解するうえで有用なだけでなく、土地被覆分類図の作成や面的な葉面積推定にも有用である。これまでの研究では、リモートセンシングが直接観測する光(電磁波)のスペクトルから分光植生指数(NDVI; Normalized Difference Vegetation Index)を計算し、その季節変化から展葉や紅葉などの各種フェノロジーを判定する手法が検討されてきた。しかし、これまでの手法では、紅葉・黄葉について、正確に観測できないことが報告されている。
そこで本研究では、GRVI(Green-Red Ratio Vegetation Index)という、緑色光と赤色光の地表面反射率から計算される分光指数を用い、群落の色の変化をとらえることで紅葉や黄葉の変化を判定する手法を新たに考案した。提案手法の有効性や限界を検討するため、落葉広葉樹林など数か所において、群落の分光反射率とフェノロジーの自動観測を数年間、毎日実施した。また、衛星センサMODISの観測データに提案手法を適用し、日本における2001年から2006年までの紅葉・黄葉フェノロジーを推定し、地上観測データと比較した。いくつかの従来手法についても同様の検討を行い、提案手法と比較した。
結果、GRVIを用いた提案手法によって、従来手法に見られた誤分類を軽減し、実際に地上で起きている紅葉や黄葉の変化をより適切にとらえることができた。