ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-034
櫃間岳*, 星野大介(森林総研東北),齋藤武史(森林総研), 片山隼(岩大・農)
地形の起伏が比較的少ない立地で樹齢や個体サイズにも差が少ない、ブナが優占する2次林において、林冠の葉群の動態を調べるため、林床で全天写真を撮影し開空度を解析した。
開空度のばらつきについて、樹種・樹木サイズ・個体密度等の違いに起因する位置的な変動と、樹種ごとの展葉フェノロジーの違いに起因する季節的な変動を定量化するため、2008年に林内4haの範囲で全天写真を定点撮影し、解析ソフトを用いて開空度を算出した。また、この林で2007年に見られたブナアオシャチホコによるブナの葉の食害が開空度に及ぼす影響を定量化するため、2006年〜2008年に定点撮影した全天写真を用いて、開空度の季節推移を年ごとに比較した。
林内で最も本数の多いのは胸高直径10〜15cmのブナであるが、林冠構成種や地形をもとに林を区分すると、(1)ブナ大径木、(2)ブナ小径木、(3)ミズナラ、(4)ウダイカンバ、(5)凹地、(6)ギャップ、の6つの区に分けられた。2008年の5月上旬にはブナのみが開葉しており区による開空度は異なっていたが、展葉が終了したと見られる7月にはギャップ以外の5つの区の開空度(SOC)が7%であり、5区間での差がなかった。ブナアオシャチホコによるブナの葉の食害があった2007年8月上旬にブナ小径木区の開空度は急激に上昇し、落葉期と同等の値を示した。
さらに、林内に設置したリタートラップの落葉量から推定される樹冠葉量と全天写真解析により得られる葉面積推定値との関係について考察し、この林で計測しているCO2フラックスに葉群動態が与える影響についても検討する。