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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-036

日本における常緑広葉樹林構成種の分布を規定する気候要因と種多様性

中尾勝洋(森林総研),松井哲哉(森林総研北海道),津山幾太郎(森林総研),田中信行(森林総研)


日本における常緑広葉樹林構成種と気候要因との関係について定量的に解析し、常緑広葉樹林の種多様性の地理的な分布様式を明らかにした。

植物種の分布情報は、植物社会学データベースを用いた。対象種は、暖温帯域の成立条件とされるWIが85以上にある5903ルルベの中で、出現回数が70回以上の85種とした。対象種の有無を従属変数、暖かさの指数(WI)、最寒月最低気温(TMC)、夏期降水量(PRS)、冬期降水量(PRW)の4気候値を独立変数にし、対象種ごとにrandomForest (Breiman et al. 2001)によってモデルを構築した。

モデルの予測精度はすべての種でAUCが0.8を上回った。温度要因のモデルに対する貢献度は全ての対象種で50%以上であり、WIとTMCの貢献度が共に高かった。特にヤブツバキやヒサカキなど、暖温帯域に広く分布する種で貢献度は80%以上であり、WIが温暖な地域での分布、TMCが北限や上限での分布を規定すると推測される。PRSの貢献度は、主に太平洋側に分布するミミズバイやカゴノキなど23種で高かったが、PRWの貢献度は他の3要因に比べて低かった。対象種の気候要求性は分類樹解析により6つのタイプに分類された。このうちWI100を閾値として、より温暖な条件のみに分布が制限される種群と、閾値より寒冷な条件にも分布する種群との2つに大きく区分された。さらに、PRS約900mm、TMC-0.5℃などを分岐条件として細分化された。常緑広葉樹林の種多様性は、温暖で湿潤な伊豆半島以西の太平洋沿岸域で最も高いと予測された。地理的な分布は、温度要因に対応して高緯度から低緯度、高標高から低標高にかけて増加した。また種多様性はWIが同程度でもより多雨な条件で高く、瀬戸内沿岸や日本海側に比べて太平洋側で高いと予測された。


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