ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-054
*鎌倉真依(奈良女大・共生セ), 古川昭雄(奈良女大)
気孔は、葉内のCO2濃度 (Ci) を感知して開閉することが知られている。気孔開度の指標となる気孔コンダクタンス (gs) は、一般にCiの増加に伴って減少すると考えられてきた。一方、1970年代のいくつかの論文 (Dubbe et al. 1978など) や近年の気孔応答に関する総説 (Vavasseur and Raghavendra 2005) では、CO2-freeよりも高いCO2濃度下で気孔開度が最大になる可能性が示唆されている。しかし、そのような気孔応答に関する実証的な報告は殆どなく、メカニズムについても不明である。
そこで、C3植物のポプラ (Populus Euramericana)を用いて、様々な条件下でCiの変動に対する気孔の応答を測定した。CO2量が光合成を律速する低Ci下では、gsはCiの増加に伴って増大することが分かった。gsは、Ci =130 μmol mol-1付近で最大になり、それ以上Ciが増加すると直線的に減少した。但し、上述のようなgsのピークが検出されたのは、強光および高湿という気孔が開きやすく、光合成速度が高い環境条件下に限られていた。低O2濃度 (2%) 下でも、ピークは見られた。
また、様々な植物のCiに対する気孔応答を測定したところ、C3植物では、総じて低Ci下でのgsの増大が見られたのに対し、C4植物のgsはCiの増加に伴って直線的に減少した。減少の程度は種によって異なっていた。測定を行った植物の光合成によるCO2利用効率とgsの間には正の相関が見られた。
以上の結果から、低Ci下でのgsの増大は、CO2量が光合成の律速要因である条件下でより多くのCO2を獲得するための応答であり、光合成活性に強く関係していると考えられる。このような観点からCiに対する気孔応答についてさらなる検討を行っている。