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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-064

ダケカンバの展葉に対する低温の影響とアクアポリンとの関係

*高山縁,小野清美,隅田明洋,原登志彦(北大・低温研)


低温下では植物の吸水や蒸散は抑えられ、生体膜の水透過性も低い。膜の水透過性には水チャネルであるアクアポリンが関与しており、開芽・展葉時には、細胞内へ水を取り込むために、細胞膜や液胞膜で多量のアクアポリンが必要とされると考えられる。北方林では樹木の開芽や展葉時には低温にさらされていることが多い。そこで、低温が樹木の展葉や光合成に与える影響に関して、アクアポリン量とどのような関連があるのかに着目して研究を行った。落葉広葉樹のダケカンバ(Betula ermanii)の苗木を開芽前から常温(15-20℃)または低温(5-10℃)に設定した人工気象器内で栽培し、展葉・落葉の観察、光合成速度の測定および芽・葉・根におけるアクアポリン(液胞膜に局在するTIPおよび細胞膜に局在するPIP)の定量を行った。

常温ではTIP、PIPともに展葉が進むにつれ増加したが、夏葉では春葉よりもPIPの蓄積量が少なかった。一方、低温ではTIP、PIPともに芽で最も多く蓄積し、展葉が進むにつれ減少する傾向にあった。常温個体の根では高い水透過性を示すPIP2が生育初期から後期にかけて増加したが、低温個体では一定であった。常温個体に比べ低温個体の開芽率は低く、葉面積は小さく、乾燥重量当たりの窒素含量は高く、遅延緑化が見られた。

低温では常温に比べ開芽が遅れ、葉面積の増加が抑えられるものの、芽や根にアクアポリンを蓄積し、低温によって抑えられると考えられる水輸送を補おうとする傾向が見られた。また、低温では葉面積当たりの窒素含量を高く保ち、常温と同程度の光合成活性を維持していると考えられる。一方、常温では根や春葉のアクアポリン量を増加させ、高い吸水能力を保ち、成長を維持していると考えられる。


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