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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-065

異なる場所に生育するブナの蒸散特性

立石麻紀子(九大・福岡演習林), 熊谷朝臣(九大・福岡演習林), 内海泰弘(九大・宮崎演習林), 陶山佳久(東北大・院・農), 日浦勉(北大・苫小牧研究林)


我が国の冷温帯林の代表的な樹種であるブナは、寡雪温暖地域から多雪冷涼地域まで様々な環境下に生存している。この広い分布域で、ブナはその個葉面積に地理変異が存在することが知られており、厚く小さい葉を持つ西南のブナは比較的厚く小さい葉を持ち、乾燥に適応していると考えられている。また、樹冠構造にも地理的な特徴があることが報告されている。このような形態的な違いにより、それぞれの環境下におけるエネルギー利用効率や蒸散特性が異なることが考えられる。そこでこの検証のために、北海道黒松内、宮城県川渡、宮崎県椎葉の3カ所においてブナの単木水利用量及び微気象環境の観測を行い、形態的特徴の違いと蒸散特性の関係を明らかにすることを試みた。

単木水利用量は樹液流計測法(グラニエ法)を用いて樹液流速の空間変動も考慮して算出した。これまでに黒松内と川渡は日本海側の遺伝的集団に属し、椎葉は太平洋側の遺伝的集団に属していることが分かっている。観測地のブナの個葉面積は、黒松内、川渡、椎葉の順に大きく、黒松内と椎葉では約3倍もの違いが見られた。また、黒松内と川渡では垂直方向に長い樹冠形であるのに対し、椎葉では薄く、水平に広い樹冠形をしていた。単位葉面積当たりの純放射吸収量に対する蒸散速度は黒松内が大きく、川渡、椎葉の順で小さくなっていた。以上の結果に合わせて気孔コンダクタンスを算出し、蒸散制御に影響する環境要因とブナの環境応答の地域差を考察する。


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