ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-086
*高橋耕一(信州大・理),宮島 悠(信州大・理)
落葉広葉樹2種(ダケカンバ,ナナカマド)と常緑針葉樹2種(シラビソ,オオシラビソ)の葉の炭素安定同位体比を長野県乗鞍岳において標高傾度(1600〜2400m)にそって調べた.落葉広葉樹2種の炭素安定同位体比は,分布上限を除いて,高い標高ほど低い値を示した.一方,常緑針葉樹2種の炭素安定同位体比は標高とは特に相関はなかった.落葉広葉樹2種の炭素安定同位体比はleaf mass per area (LMA)と正の相関があったため,標高傾度にそった炭素安定同位体比の変化はLMAの変化によるものと考えられた.最大光合成速度と正の相関のある葉の重量当たりの窒素濃度(Nmass)は落葉広葉樹ではLMAと負の相関があったが,常緑針葉樹ではLMAとは相関がなかった.落葉広葉樹2種の葉の寿命は高い標高ほど減少したが,常緑針葉樹2種の葉の寿命は増加した.したがって,落葉広葉樹2種は高い標高ほど(Nmass)が高く寿命が短くて薄い葉をもっており,一方,常緑針葉樹2種は長い寿命の葉をもっていた.このような落葉広葉樹と常緑針葉樹の標高傾度にそった葉形質の変化は高い標高での正の炭素収支を維持に貢献するものと考えられる.したがって,落葉広葉樹と常緑針葉樹の間で標高傾度にそった炭素安定同位体の変化が異なっていたことは,標高傾度にそって正の炭素収支を維持するための葉形質の変化が異なっていたためであると結論される.