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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-099

オオオナモミの力学的性質における個体密度の影響 〜植物の耐"自重"・耐"風"構造〜

*長嶋寿江(東北大・院・生命科学), 渡利亮司, 広瀬忠樹(東京農大・国際農業開発)


混んだ群落では植物はしばしば徒長する。徒長は競争下における光獲得に有利である一方、倒伏などの力学的失敗のリスクを高めると考えられるが、その定量的評価はあまりなされていない。植物の力学的失敗としては、主に、自重を支えきれず変形する“座屈”と、風による曲げモーメントがかかることによる茎の“折れ”が考えられ、それぞれ独立の現象である。そこで、競争下の植物においてこれら力学的失敗のリスクの評価を試みた。

ポット植えしたオオオナモミを密度100個体m-2(高密度条件)と4個体m-2(孤立条件)にて育て、個体の形態や、茎の材料力学的性質(曲がりにくさを表し座屈に関与する“弾性係数[ヤング率]”、折れにくさを表す“破壊係数”)を測定した。それらをもとに材料力学的理論モデルから「座屈限界茎直径(これ以下になると座屈が生じる)」と、ある風速における「折れ限界茎直径」を求め、実際の茎直径と比較した。座屈安全率(= 実際の茎直径/座屈が生じる限界茎直径)は孤立個体で1.5前後だったのに対し、高密度個体ではほぼ1で、座屈が生じるぎりぎりの茎直径だった。茎折れが生じる限界風速は、孤立個体では28 + 4 m s-1、高密度個体では16 + 1 m s-1と計算された。これらから、高密度個体はやはり力学的な危険とひきかえに高さ成長をしていることが示唆された。通常の風環境(~5 m s-1)では折れ限界直径は座屈限界直径よりも小さかったことから、このような環境で力学的に最低限必要な茎の太さは座屈限界直径であることが示唆され、そのため多くの植物では徒長の際に座屈限界直径付近まで茎の直径成長を抑えるのだろうと考えられた。


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