ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-105
種子田春彦(東京大学・理・生物),寺島一郎(東京大学・理・生物)
葉のサイズは種間や個体内において大きな幅がある。こうした葉のサイズの多様性は、サイズによらず水や無機塩などが葉肉細胞に充分な量で供給されることによってはじめて成立する。水の輸送に注目すると、輸送能力を上げるためには葉脈内の導管の数と直径を調節することが重要になる。本研究ではタバコを材料にして、葉のサイズが変わったときの葉脈、特に主脈における水輸送能力と導管の形態の変化について解析を行った。
主脈の水輸送能力(通導コンダクタンス)は、葉面積に正比例して増加した。こうした通導コンダクタンスの増加は、導管径ではなく導管の総数に依っていた。導管の総数は、放射細胞列と細胞列あたりの導管の数の2つの要素に分解することができる。そして、この両者はともに葉面積に比例して増加した。
葉面積に木部形態が応答できるメカニズムとして、主脈の形成層がオーキシン濃度から葉面積を感知しているという仮説を立てた。オーキシンは若い葉の葉肉細胞で作られており、下流にあたる葉の基部ほどオーキシン濃度が高くなる可能性がある。こうした濃度勾配を感知することで、葉面積に応じた木部形態を決めることができる可能性があるからだ。この仮説を検証するために葉の発生の初期に葉肉を切除し、切り口にオーキシンを塗布したところ、葉面積当たりの通導コンダクタンスが増加した。これは葉面積への応答と同様に、導管の直径によるものではなく、導管の数によるものだった。
以上のようなメカニズムによりタバコの葉は葉面積の変化に対して水分の供給を維持できることが示唆された。