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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-115

小笠原諸島固有木本植物オガサワラビロウの散布体の浮遊性の種内変異

石神唯(首都大・理工),鈴木準一郎,可知直毅


水散布型植物において散布体の浮遊能力は、水の媒介によって散布体が移動できる距離に影響を与えると考えられる。浮遊能力の種内変異は散布距離の種内変異をもたらし、繁殖成功に影響を及ぼすことが予想される。本研究では、オガサワラビロウを材料として、散布体の浮遊能力の種内変異を定量的に記述した。また、浮遊能力が決まるメカニズムを推定し、浮遊能力に関わる散布体特性の種内変異が、どのように浮遊能力の種内変異をもたらすのかを考察した。

オガサワラビロウ(ヤシ科)は散布体の形態から水散布型に分類されているが、小笠原諸島内では海岸近くから山地部にまで分布している。2007年11月に父島と母島のそれぞれ30個体から散布体(果実)を20個ずつ採集し、浮遊能力の指標として海水中での浮遊継続日数を測定した。散布体特性(空隙の割合,木化組織の割合,含水率,体積,生重量,比重)と浮遊日数の因果関係をパス解析によって検証した。

散布体の浮遊日数には0〜43日の幅があり、平均(±SD)は10.98±10.32日であった。散布体の浮遊日数の全体の分散のうち、57.6%は個体間の変異で、42.3%は個体内の変異で説明された。

パス解析の結果、散布体特性は主に比重を介して浮遊日数に影響を与えたことが示された。散布体の含水率は比重と負の相関を示し、比重は浮遊日数と負の相関を示した。父島の散布体の空隙の割合は比重と負の相関を示した。父島の散布体の体積は含水率と正の相関を示し、浮遊能力に影響を与えた。一方、母島の散布体の木化組織の割合は比重と負の相関を示した。

本研究により、オガサワラビロウの散布体の浮遊能力には個体内にも個体間にも大きな変異があるということが明らかになった。さらに、散布体中の空隙、木化組織、散布体の含水率、体積の種内変異は、散布体の比重を介して、浮遊能力の種内変異をもたらすことが示唆された。


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