ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-116
*五十嵐知宏,上野直人,清和研二 東北大学大学院農学研究科
種子散布は植物個体群のハビタット選択において重要である。河畔域では特に流水による影響が大きく、水散布による種子のインプットが河畔域の植物個体群のテンプレート形成にとって重要であると考えられる。しかし、水散布における落果から実生定着までに至るプロセスに関してはほとんど明らかにされていない。なぜなら、水散布が長期的で複雑なプロセスで成り立っているためである。特に長期的な調査はその対象を見失うなどのリスクを伴うため、困難とされてきた。
そこで本研究では、地形的な要素を考慮したデザインで標識種子の長期的なセンサスを行い、種子の水散布プロセスの解明を試みた。また、サワグルミの種子の漂着しやすい場所が実生の生育場所と一致するのかを解析することで、サワグルミにおける水散布の有効性を考察した。さらに、地形別にシードトラップを設置し、風散布による種子の一次散布量と実生の分布構造を解析した。
解析の結果、淵や倒木ダムには流下する種子を捕捉する効果があり、そのため種子が流速に比べ極めて緩やかな速度でかつ持続的に移動していることが明らかになった。また、このように緩やかに移動していた種子は翌春の融雪洪水によって実生の生育適地に打ち揚げられることが明らかになった。一方、風散布による種子の散布量は当年生実生の数と関連性がみられ、風散布も定着適地選択に有効であることが明らかになった。さらに本研究では、水散布・風散布それぞれの定着適地選択における相対的な有効性について解析した結果を報告する。