ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-118
*吉川徹朗(京大院農), 井鷺裕司(京大院農), 菊沢喜八郎(石川県大)
鳥散布植物と果実食鳥とのあいだの関係は、相利共生関係の典型として多くの注目を集めてきた。一方で、果実食鳥以外のさまざまな動物も果実・種子を採食し植物に被害を与える。このような散布前種子捕食は散布される種子量のポテンシャルを減少させると考えられるが、果実‐果実食者の関係にどのような影響を及ぼしうるのかは多くが未解明である。
種子食鳥は、主要な散布前種子捕食者のひとつである。本研究では、群れで行動する種子食鳥イカルによる散布前種子捕食に着目した。京都大学理学部植物園においてニレ科エノキ属エノキCeltis sinensisとコバノチョウセンエノキ(以下、コバ)C. biondiiの2樹種について3年間(2005, 2007, 2008)に渡り、イカルによる種子捕食を調査した。両種はともに鳥散布型の液果をつける高木種で、8-10月に果実が成熟する。イカルの食痕をシードトラップで継続的に採取することで捕食種子の量および季節パターンを評価した。また樹上果実の経時モニタリングを行ない、果実残存期間を記録した。加えて両種の果実・種子の形質や栄養成分、およびイカルによる種子1個あたりの処理時間を計測した。またラインセンサス法により調査地でのイカル個体数の季節的変化を観察した。
2樹種を比較した結果、イカルによる種子捕食の量には大きな種間差があり、3年を通じてコバの方が強い捕食を受けていることが明らかになった。一方、捕食の季節パターンは、特にコバにおいて年度間で変化した。得られたデータから、樹種間での捕食強度の違い、年度間での捕食季節パターンの違いを生み出す要因について議論し、2樹種においてイカルが鳥散布果実‐果実食鳥の関係にどのような影響を与えたかを考察する。