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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-119

鳥による種子散布パターンの近縁種間比較ーリスクとリターンの観点からー

*澤 綾子(筑波大・生命環境), 正木 隆(森林総研), 直江将司(京都大・生態研セ), 井鷺裕司(京都大・農), 兼子伸吾(京都大・農), 鞠子 茂(法政大), 沼田 治(筑波大・生命環境)


温帯では、多くの液果樹木は散布者となる鳥類の渡りの時期にあたる秋に結実する。一方で、一部の液果樹木は鳥類の繁殖期にあたる夏に結実する。夏と秋では散布者となる鳥類の組成や行動が変化するため、量的、質的な種子散布パターンが大きく異なることが予想される。そこで本研究は、サクラ属の近縁な2種、すなわち、夏結実種カスミザクラと秋結実種ウワミズザクラにおける種子散布パターンの比較から、結実季節の違いが種子散布パターンに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

調査は、2006年と2007年の5−12月に茨城県北茨城市の小川試験地において行った。試験地全体に326個のシードトラップを設置し、種子落下量の空間分布を調べた。シードトラップに落下したすべての種子のうち、鳥によって散布された種子の割合から、種子散布の量的効率として鳥による樹冠からの果実の持ちさり率を算出した。種子散布の質的効率として、鳥散布種子の散布距離をマイクロサテライト解析による母樹推定から求めた。

果実の持ちさり率はカスミザクラで4.6%、ウワミズザクラで30.1%であり、ウワミズザクラの方が高かった。カスミザクラは毎年一定量結実したが、ウワミズザクラは結実量の年変動が大きく、種子を散布できない年があった。種子の鳥散布距離の中央値(最大値)は、カスミザクラが22 m (301 m)、ウワミズザクラが7 m (70 m) であり、ウワミズザクラの方が短かった。これらの結果より、(1) 夏結実種カスミザクラの結実量には年変動が少なく、散布の質的効率が高いこと、(2) 秋結実種ウワミズザクラは結実量の年変動が大きいものの、結実年には高い量的効率で散布されることが明らかになった。


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