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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-123

ネズミによるトチの実の選り好み:サポニンvs.種子サイズが貯食に与える影響

*増谷優,吉澤結子,星崎和彦(秋田県立大・生物資源)


アカネズミによる貯食行動を通じて散布されるトチノキの種子は、大型で糖質に富むが苦味のある二次代謝物質サポニン(エスシン類)を含んでいる。エスシンは種子のみに含まれることから、種子捕食者に対する防御物質として機能していると思われる。本研究では、種子の持ち去り実験と埋土実験から、ネズミはエスシン濃度が低く大型の種子を好むという仮説を検証し、エスシンの適応的意義を検討した。

持ち去り実験は、秋田県五城目町の落葉広葉樹二次林で行った。あらかじめエスシン含有率と重量を測定した標識種子をネズミに持ち去らせ、摂食程度・移動場所を10日間毎日観察した。また、エスシン含有率が長期間の貯食に伴って変化しうるかを検討するために埋土実験を行った。エスシン含有率を定量した種子を埋め、一定期間後に掘り出して再び削り、エスシン含有率を同一の種子でくり返し最長6か月後まで定量した。

持ち去り実験では、持ち去られた種子と動かなかった種子のエスシン・重量に差はなかった。種子の移動距離は多くは10m以下だったが、最大36m運搬されたものもあった。移動距離にはエスシン・重量は影響しなかった。種子の生存時間とエスシン・重量との関連を解析した結果、エスシン含有率の低い種子の死亡リスクは高い種子より0.40〜0.45倍であった。埋土実験では、2月(埋土3か月後)以降にエスシン含有率が最大1.75倍に増加した。発芽直前に子葉の糖質などが代謝され、見かけ上エスシン含有率が上昇した可能性がある。

以上から、トチノキ種子のエスシンはネズミによる持ち去りには影響せず、貯蔵後の摂食の回避に関係することが示唆された。貯食型散布の樹木にとって、種子の二次代謝物質は散布の成功を左右する重要な要因だと思われる。


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