ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-130
小南陽亮(静岡大・教育),真鍋徹(北九州自・歴博),永松大(鳥取大・地域),西村尚之(名古屋産業大),齊藤哲,佐藤保(森林総研)
照葉樹林の樹木は様々な手段で種子を散布しており、鳥などに採食されて種子が運ばれる鳥散布種が最も多く、次いで哺乳類などの貯食習性によって運ばれる種と風によって運ばれる風散布種が多い。鳥散布のように生物を媒体とする場合と風散布のように物理的に運ばれる場合とでは、シードレインの分布特性が大きく異なると予想される。鳥散布は多種対多種による相互作用系であるため、媒体となる鳥種の行動やその変動によってシードレインに大きな不均一性と年変動が生じるはずである。一方、風散布では、物理的な規則性に従った特性以外の確率論的な不均一性は生じにくく、年変動も小さいと考えられる。
そこで、本研究では、宮崎県綾町の照葉樹林において、鳥散布と風散布によるシードレインの分布特性を比較し、両者の不均一性と年変動にどのような違いがあるのかを明らかにする。解析では、1.2haの調査区に規則配置した263個のシードトラップによる6年間のシードレインのデータを用いた。その結果、鳥散布によるシードレインには風散布よりも顕著な不均一性がみられ、年変動も鳥散布のほうが大きかった。また、シードレインが異種の樹木の分布に影響されることも鳥散布の特徴であった。このような鳥散布と風散布のシードレイン特性の違いは、生物媒体と物理媒体という根本的な相違に起因するものであり、照葉樹林に限らず普遍的にみられるものであろう。シードレインの特性は、樹木の繁殖や森林の更新に対する種子散布の効果(例えば、親個体からの離脱や林冠ギャップでの更新)に影響するといわれており、両者の違いは繁殖や更新に対する効果にも影響すると予想される。