ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-131
*加藤正士(横国大・環情),大野啓一(横国大・環情),酒井暁子(横国大・環情),服部千代子(横国大・環情),北川涼(横国大・環情),馬雁飛 (横国大・環情)
はじめに:静岡県と神奈川県の県境の熱海・函南地域には、アズマネザサの一品種であるハコネダケの優占する植分が広く分布し、この地域の植生景観を特徴づけている。本研究では
、このハコネダケ群落が地域植生の更新・遷移動態に及ぼす影響について植生生態学および景観生態学の観点から解析した。
研究方法:ハコネダケがどのような形態で分布しているのかを把握するため、調査地域に現存するすべての植生タイプを対象として植生調査を行った。ハコネダケ植分の分布と地形単位の対応関係を明らかにするため環境省の現存植生図(1:25,000)を用い解析した。空中写真の判読により、植生遷移の初期段階のハコネダケの侵入・定着過程を解析した。ハコネダケと競合関係が考えられる低木林および高木林との関係解析を目的として、林床植生を形成しているハコネダケの幹密度の計測および毎木調査を実施した。
結果と考察:植生調査の結果、幹密度および植被率の高い状態のハコネダケ植分が高い頻度で成立する群落は、ハコネダケ群落と先駆性低木林のニシキウツギーリョウブ群落で出現頻度は90%以上、平均植被率は50%以上であった。里山二次林のオニシバリーコナラ群集では37スタンド中4箇所と少なかった。本地域の気候的極相林と考えられるヤブコウジースダジイ群集やツルシキミーアカガシ群落では出現頻度は70%以上と高かったが、その平均植被率は30%以下であった。コナラ林の林床にハコネダケ植分が成立する割合が低い理由として、スギ・ヒノキ人工林と同様に人為的管理の程度が強く影響していると考えられた。