ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-135
*植松裕太,丑丸敦史,大澤剛士(神戸大院・発)
人為的な管理によって伝統的に維持されてきた半自然草原は、多くの生物にとって重要な生息場となっている。しかし近年、管理手法の近代化や放棄に伴ってその環境は変質し、多くの生物が絶滅の危機に瀕している。半自然草原の保全のためには継続的かつ適度な管理が必要とされるが、その面積は広大であるため、全ての範囲に適切な管理を施すことは難しい。効率的な保全計画立案のために、半自然草原において特に生物多様性のポテンシャルが高い場所を特定し、保全努力を集中させる必要がある。
生物の生息適地環境は景観要素のような比較的広域スケールの要因と、微環境のような狭いスケールの要因が複合的に作用して成立すると考えられる。そこで本研究では、里草地(田畑の畦やため池の堤などの草地)を対象に、スケールごとに環境要因が生物多様性に与える影響を明らかにし、ポテンシャルの高い場所を探ることを目的とした。
調査は2008年に兵庫県宝塚市の里山景観における18の棚田において行った。各棚田の最上部にあるため池から下方へ向けて1本のトランセクトを引き、交わった畦に計129のコドラート(0.5×2m)を設置した。各コドラート内で植生調査と、土壌水分量および地上バイオマス量の測定を行った。解析は、まず棚田を単位として、各棚田の地形的特徴と植物多様性の関係を検討した。次にコドラートを単位とし、コドラート直上の農地における耕作状況やため池からの距離といった周辺の土地利用の状況と植物多様性の関係を検討した。最後にコドラート内の土壌水分量や地上バイオマス量といった微環境条件と地形や土地利用の関係性、さらにその結果としての植物多様性への影響性を検討した。得られた結果を総合し、里草地において植物多様性の高い場所がどのような所であるのか考察した。