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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-139

ナミビアのモパネ植生帯における植生景観とヤギの放牧活動の関係

手代木功基(京都大・AA研)


アフリカ大陸の南緯20度付近にはマメ科ジャケツイバラ亜科の半落葉樹であるモパネ(Colophospermum mopane)が帯状に分布し,モパネ植生帯を形成している.モパネ植生帯の特徴として,先行研究ではモパネが純林を形成していることや草本が少ないということが指摘されてきた.ナミビア北西部のモパネ植生帯においては,年平均降水量が250mm程度と少ない降水量のもとで,植生に依存した牧畜が地域住民(ダマラ)の重要な生業となっている.したがって,干ばつなどの環境変動が人々に大きな影響を与える本地域の持続的な自然利用を考えていくためにも,モパネ植生帯の特徴と放牧活動の関係について詳細に明らかにする必要がある.本研究は長期間の現地調査をもとに,ダマラの人々にとって重要とみなされているヤギ放牧が植生景観といかなる関わりをもって営まれているかを明らかにすることを目的としている.

ライントランセクトとコドラートを用いた植生調査の結果,植生構造およびモパネの樹形は,水場・住居からの距離と地形単位によって違いがみられた.水場・住居からの距離が近い場所では,中高木のモパネが優占していた.一方で,水場・住居からの距離が遠いペディメント上では,モパネ以外の樹種が優占する場合が多く,樹形は低木(ブッシュ状)であった.またヤギの採食行動の追跡調査からは,木本種が重要な採食種となっており,季節によって長時間採食されている植物種には違いがみられること,低木のモパネは季節を問わずに高い割合で採食されていることが示された.これらの結果から,地形単位が異なることによって生じる土壌水分などの環境条件の差異と,採食圧の差異によって植生景観は異なっており,その植生構造や樹形の場所による違いを有効に利用して,ヤギの放牧活動が行われていることが明らかとなった.


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