ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-140
藤田素子(京大・東南ア研),Dewi Prawiradilaga(RCB-LIPI),吉村剛(京大・生存研)
東南アジアでは産業植林地の拡大により,生物多様性が減少している.こういったアカシアやオイルパームなどの植林は増加しており,植林地での生物多様性保全が緊急の課題である.特に鳥類の多様性保全には,ランドスケープ構造を検討することが有効である.これまで筆者らはインドネシア・スマトラ島南部のAcacia mangium植林地において予備研究を行い,保全二次林から遠いアカシア林でも鳥類の種数が高い場合があることから,河川沿いにある帯状の残存二次林が鳥類の生息地となる可能性を指摘した.そこで本研究では残存二次林が鳥類多様性保全に果たす役割を明らかにすることを目的とした.
調査はPT. Musi Hutan Persada社が管理する26万haのアカシア植林地で行った.調査地点は保全林4か所,残存林2か所,保全林からそれぞれ0.5km,1-2km,5-6km,10-15kmの距離にある0-1齢のアカシア林4か所と,4-5齢のアカシア林6か所とした.周囲に残存林がある影響をみるために,遠い距離にある4-5齢のアカシア林のうち2か所を残存林に隣接しているアカシア林,残り2か所を周辺に残存林がないアカシア林とした.一般性をもたせるために,同様の調査を2地域で行った.鳥類の調査では,10分間のポイントカウント法により,出現種・個体数・観察距離を記録した.その結果,保全林および残存林のほうが,アカシア林よりも種数が多く,残存林はアカシア林で生息せず個体数が少ないPitta guajanaなどの重要な生息地となっていた.このように二次林が隣接することで,アカシア林で観察される鳥類の種数や種組成にどのような違いが生じるのかについても議論する.