ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-142
*島崎彦人,福島路生(国環研)
蛇行する河川がつくりだす瀬や淵などの複雑で多様な地形は,河川に生息する魚類や底生生物の環境利用と密接な関係があることが知られている.本研究では,瀬と淵の位置を効率的に把握することを目的として,リモートセンシングを援用した瀬淵分布の推定手法について検討する.研究対象河川は,北海道北部の宗谷丘陵を蛇行して流れる狩別川本流とその5つの支流とした.これら6本の河川に,約1〜2kmの調査区間を合計7ヶ所設定し,それぞれにおいて詳細な現地調査と航空機観測を実施した.現地調査では,各区間の河道特性(勾配と河道幅)を計測するとともに,相対的に水深が浅く流れの速い「瀬」と水深が深く流れの遅い「淵」を,その成因を考慮しながら注意深く特定し,位置と水深を記録した.また,淵の形成に重要な役割を果たす河道内の倒流木についても,その位置と堆積規模の計測を行った.航空機観測では,写真測量分野で普及している測量用デジタルカメラ(DMC)を用いて,地上分解能約10cmにて,異なる4つの波長域(すなわち,青,緑,赤および近赤外)の放射輝度を分光観測した.観測画像に内在する幾何学的な歪は,デジタル地形モデル(DTM)を利用したオルソ化処理によって補正し,現地調査データとの地理的な整合性を確保した.本報では,これらのデータを用いた基礎的な解析の結果に基づいて,次の3点について報告する:(1)瀬淵の有無を分光観測画像から直接的に推定できる可能性;(2)瀬淵の有無を規定する諸要因の分布を分光観測画像から推定できる可能性;(3)瀬淵の有無とそれを規定する諸要因とを関連付ける統計モデルの構築とその予測性能.そして,最後に,以上の結果を踏まえて,リモートセンシングデータのみに基づいた瀬淵分布推定の可能性と限界について議論する.