ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-146
望月翔太(新潟大・院・自然),芝原知(新潟大・院・自然)村上拓彦(新潟大・農)
野生動物による農作物被害において、農地と生息地の関係を空間的に捉えることが重要とされている。そうした場面で、リモートセンシング技術は農地と動物生息地の関係を把握するのに役立つことが報告されている。本研究では、新潟県新発田市に生息するニホンザル(Macaca Fuscata 以下サル)を対象に、時期の異なる衛星画像を用いて生息地を把握することを目的とした。特に、サルの生息地が時期的にどのように変化するかに着目し、群れの行動圏の変化との関係を明らかにした。
使用した衛星画像はALOS/AVNIR-2(2006年5月27日、2006年11月9日、2007年8月12日)である。これらの衛星画像から正規化差植生指数(NDVI)を算出し、5月から8月、8月から11月の差画像を作成し、変化箇所の抽出を行った。サルの位置データは、ラジオテレメトリー法により得られた2006年、2007年、2008年のデータを用いた。なお、行動圏推定にはLSCVを用いた固定カーネル法を用いた。
サルの行動圏は、6月から8月にかけて小さくなり、8月から11月にかけて大きくなった。一方、各時期のNDVI値は6月から8月にかけて増加し、8月から11月にかけて減少した。このNDVI値の増減が、サルの行動圏の変化と関係があると考え、NDVI値の変化箇所を抽出した。その結果、NDVI値が変化する場所に水田が多く含まれていることがわかった。これは、8月にかけて水稲が生育するためである。つまり、農作物を利用するサルにとって、8月は利用可能な農作物が多くなり、餌を探し回る必要がないため行動圏が小さくなると考えられる。また、6月や11月は、餌を探し広く移動するため行動圏が大きくなることが推察された。