ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-147
*芝原 知(新潟大・院),望月 翔太(新潟大・院),村上 拓彦(新潟大・農),三浦 慎悟(早稲田大・人)
二ホンザル(以下サル)による農作物被害対策の効率化のため、その被害発生要因を明らかにすることは重要である。動物の生息域における環境分析は、対象種の生息環境の把握や生息地の保護を論じる際によく用いられるが、農作物被害に対しても被害要因の特定と被害予測の手法として有効と考えられる。そこで本研究では、被害地域で複数の個体群を対象として被害発生要因となる環境特性を明らかにした。
調査地は新潟県新発田市である。当地域では約13群、500頭ほどの野生ザルが生息すると推定されている。この内、農作物への加害があると考えられる12群について、ラジオテレメトリー調査により追い払いが行われている。
この追い払いによる群れの位置情報から、各群れの行動圏を推定した。位置情報は2004〜2006年の6〜11月に得られたものを使用した。また、行動圏内の農地を100m四方に分割した農地メッシュを作成し、群れの位置情報と重なるメッシュと、その隣接メッシュを被害農地と定義した。各農地において、森林、住宅地、道路、水域、柵からの距離を説明変数、被害の有無を応答変数とし、一般化線形モデルと一般化線形混合モデルを用いて解析を行った。
解析の結果、最適モデルに選択される変数は群れにより異なった。行動圏が隣接する地域個体群でも被害発生要因となる環境因子は異なることが明らかとなった。これは各行動圏内の微小な環境の違いが反映された結果と考えられ、サルは局所的な環境に適応した生息地利用を行っていると考えられた。森林からの距離は12群中8群で重要な因子として選択され、被害への寄与度も他の変数に比べ高かった。また前述以外の4群は、行動圏内の農地のほとんどが十分に森林に近い地域であった。以上から、森林からの距離はサルによる被害において重要な被害発生因子であると考えられた。