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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-152

長野県における希少マルハナバチ類の分布特性

須賀 丈(長野県環保研),田中洋之(京大・霊長研),丑丸敦史(神戸大・人間発達環境),湯本貴和(総合地球環境研)


日本列島の本州以南でマルハナバチの種数が最も多いのは中部山岳域である。マルハナバチの世界的な分布の中心はユーラシアの草原である。本州中部を代表する草原としては高山の自然草原がある。しかし高山でみられるマルハナバチの種は限られており、多くの種はより標高の低い場所に分布する。そこでどのような環境にマルハナバチの各種が分布しているのかをあきらかにするため、長野県で広域の分布調査をおこない、各種の分布と植生景観や標高・土壌との関係を統計的に調べた。

1996年〜2008年の間に、長野県の北部から南部、低地から高山帯までを含む3次メッシュ344区画で10種3000個体余のマルハナバチを確認した。そして各メッシュ区画の環境条件とマルハナバチ各種の確認の有無との関係を、多変量解析やロジスティック回帰分析により調べた。環境条件の指標としては、標高・植生・および土壌が黒ボク土か否かをとりあげた。黒ボク土は、過去における半自然草原の指標となると考えられる。長野県でも全国的な傾向と同様、過去数十年に半自然草原が大きく減少したと思われる。

分析の結果10種のマルハナバチは、(1)高山・亜高山の自然草原に主に分布する種(ヒメマル・ヤドリマル・ナガマル)、(2)山地帯以下のかつての半自然草原とその周辺に主に分布する種(ホンシュウハイイロマル・ウスリーマル・クロマル)、(3)低地から山地の森林を中心として広域でみられる種(トラマル・ミヤママル・コマル・オオマル)の3タイプに分けることができた。このうち(2)のタイプは黒ボク土との結びつきが強く、半自然草原に依存して生き残ってきたと考えられる。このタイプは近年の土地利用変化により衰退しつつある可能性が大きく、その存続にとっては半自然草原の保全・復元が重要と考えられる。


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