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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-155

手賀沼流域における水生植物の分布に景観構造が与える影響

*富田瑞樹,齋藤康宏(東京情報大・環情),林紀男(千葉中央博),原慶太郎(東京情報大・環情)


湿性植生の多くが埋立てや排水溝の設置による環境変化で失われ,そこに生育する水生植物の多くは絶滅の危機に瀕している.千葉県の手賀沼流域においても宅地造成や護岸工事,富栄養化によって水生植物の多くが絶滅し,現在の水生植物の分布は流域の景観構造や河川構造に強く影響を受けていると考えられる.本研究では,林ほか(2008)が調査した手賀沼流域に生育する水生植物の分布をGISでデータベース化するとともに,手賀沼流域における景観構造・河川構造が水生植物の分布に与える影響を明らかにする.

手賀沼は千葉県の北西部に位置する.手賀沼を囲う亀成川流域・直接流入域・大堀川流域・大津川流域・染井入落流域・金山落流域の6つの流域を調査範囲(手賀沼流域:163.4km2)とした.21 種の水生植物分布データに対してGISを用いて経緯度情報を与えた.景観構造の指標とするために,ASTER データから得られた正規化植生指数が0.3以上の範囲を植生域としたうえで,それぞれの流域における植被率を求めた.また,河川構造を流域ごとに把握するために河川の次数・分岐間長を求めた.さらに,50mメッシュDEMを用いて河川の次数に対応する小・中・大サイズの集水域を作成し,集水域サイズに注目しながら水生植物の組成と景観構造・河川構造との関係を手賀沼流域全体および個々の流域レベルで解析した.

手賀沼流域全体でみると植被率と種数に正の相関がみられたが,個々の流域では亀成川流域でのみ正の相関がみられた.手賀沼東部に位置する亀成川流域には複雑に入り組む谷津が多く残存し植被率が高いことから,千葉県RDB種などが多く出現するためと考えられた.発表では集水域サイズの差異に着目しつつ,河川構造と水生植物の組成との関係についても報告する.


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