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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-424

チュウゴクザサの一斉開花個体群を対象とした遺伝的多様性解析

*松尾歩,陶山佳久(東北大・農),齋藤智之(森林総研木曽),住吉千夏子,斎藤誠子,井鷺裕司(京大・農),柴田昌三(京大・フィールド研),鈴木準一郎(首都大・理工), 西脇亜也(宮崎大・農),蒔田明史(秋田県立大・生資)


日本の森林の林床にしばしば優占するササ類は、長い期間を栄養成長で過ごした後に大規模に一斉開花・枯死するという稀な生活史特性をもつ。しかし、ササ類の開花の周期がほとんど明らかになっていないことから、一斉開花前後の調査をあらかじめ設定することが難しく、開花時の個体群における遺伝的な情報はこれまでにほとんど得られていない。

そこで本研究では、一斉開花現象を事前に把握することができたチュウゴクザサ(Sasa veitchii var. hirsta)の個体群を対象に、DNA分析による開花稈(計4516稈)のジェネット(個体)識別を行うとともに、種子(計1736個)の花粉親解析を行った。これらの調査により、長期間におよぶ栄養成長とその後の一斉開花がササ個体群の遺伝的多様性の維持に与える影響について検討することを目的とした。

調査の結果、一斉開花個体群にはさまざまなサイズのジェネットが多数混在して分布していることが明らかになった(12.5ジェネット/m2)。また、ジェネットのサイズの大小に関わらず、ジェネット間での種子の自殖率に顕著な差がないこと(平均16.1%)や、花粉親の多様性がどのジェネットでもおおむね高いこと(平均Simpson’sD = 0.73)などが明らかになった。

これらのことから、調査したチュウゴクザサ一斉開花個体群では、旺盛な栄養成長を長期間にわたって繰り返して自個体ラメットを増やしてきたのにも関わらず、開花時の交配では周囲で高密度になった自個体ラメットの影響は認められず、遺伝的多様性が高い次世代個体群の更新がおきると考えられた。


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