ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-434
*張替鷹介,可知直毅,鈴木準一郎(首都大・理工)
一部のクローナル植物では、栄養塩分布が空間的に不均質な環境下で,均質な環境下よりも収量が増すことが知られている.また,土壌中の栄養塩は主に水を介して吸収されるので,水の空間分布様式が栄養塩吸収に影響を与える可能性がある.そこで,本研究では「栄養塩の空間的不均質性が植物に与える影響は,水の空間分布によって変化する」という仮説を立て,実験的に検討した.
50cm四方の容器を4区画に等分し,対角の2区画にはパーライトと砂を,残りの2区画には砂利と砂を培土とし,水を空間的に不均質に分布させた.また,土壌栄養塩として遅効性肥料を用い,同様に不均質に分布させた.水と栄養塩の空間分布が不均質で同所的にある処理(pos),水と栄養塩が不均質に背反して空間分布する処理(neg),水のみ不均質に分布する処理(wat),栄養塩のみ不均質に分布する処理(nut),水も栄養塩も空間的に均質に分布する処理(hom)の5処理(10反復)を設定した.この容器で,カキドオシを栽培した.
60日後には,葉の枚数・匍匐枝の長さに処理間で有意差が認められた.葉の枚数はposの個体でneg,homよりも多かった.匍匐枝の長さはposの個体でhomよりも長かった.
水と栄養塩が不均質かつ同所的に分布する場合に,均質な場合より効率的に資源が吸収されている可能性がある.また,posでnegよりも葉数が多かったことは,栄養塩の不均質性が植物に与える影響が水の分布によって変化したことを意味する.これは,水と栄養塩が同所的に分布する場合には栄養塩吸収が促進されるが,排他的に分布する場合には水と栄養塩吸収に関する分業(division of labour)が生じない可能性を示唆する.