ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-435
*松嶋麻由子, 可知直毅, 鈴木準一郎 (首都大・理工)
一部のクローナル植物の成長量は、栄養塩分布が均質な場合よりも不均質な場合が大きいといわれている。しかし、栄養塩分布が不均質な環境下でのクローナル植物の個体間競争に関する報告はない。そこで、栄養塩分布の不均質性はクローナル植物のジェネット間競争に影響を与えるという仮説の下、次の予測を栽培実験により検討した:(1) 2個体の個体重総和は、不均質な場合で均質な場合より大きい、(2)2個体の個体重総和に対する競争の効果は、不均質な場合で均質な場合よりも小さい、(3)栄養塩分布が不均質な場合、富栄養パッチの地下部重量は貧栄養パッチよりも大きくなる。
材料はカキドオシの2個体(斑なし、斑あり)を用いた。栄養塩分布条件(均質・不均質)、競争条件(競争あり・なし)の2要因を設定した。不均質条件では、50 × 50 cmの栽培容器内に25 × 25 cm の富栄養パッチと貧栄養パッチを市松模様に配置した。均質条件では、不均質条件の総栄養塩量と同量の栄養塩を容器内に均質に分布させた。9反復を90日間栽培し刈取り、個体ごとに地上部、地下部乾重量を測定した。
2個体の個体重総和は均質条件で有意に大きく、競争の効果は不均質条件で有意に小さかった。不均質条件では、地下部重量にパッチ間で有意な差が認められなかった。このことから、不均質条件に対するカキドオシの顕著な反応は、競争の有無に関わらず見られなかったと言える。しかし、1個体の個体重を全処理間で多重比較してみると、競争下にある個体の反応は、栄養塩分布条件によって異なる傾向が見られた。不均質条件では、各個体が競争した場合もしない場合も個体重がほぼ同じだった。一方、均質条件では、競争した場合に各個体の個体重が減少する傾向が認められた。