ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-438
*萩原陽介, 可知直毅, 鈴木準一郎(首都大・院・理工)
水分供給の時間的不均質性(給水頻度の違い)は植物の成長に影響をおよぼし、その影響は、栄養塩量・個体間競争の強さによって変化しうる。さらに、給水頻度の影響は、水需要等の特性により植物種間で異なる可能性がある。そこで、給水頻度・栄養塩量・生育密度の組合せが植物成長におよぼす影響の種間差異について、栽培実験により検討した。
実験材料にはホソムギ(Lolium perenne、イネ科)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon、イネ科)、ヨモギ(Artemisa princepus、キク科)、シロツメクサ(Trifolium repens、マメ科)を用いた。植物種(4種)、給水頻度(高・低頻度給水)、栄養塩量(富・貧栄養)、生育密度(高・低密度)の4要因を設定した。実験期間全体で供給する水分量は、給水頻度によらず一定とした。36日間の給水処理後、鉢ごとの地上部・地下部重量に対する要因の影響を、4要因分散分析および種ごとの3要因分散分析により解析した。
地上部重量は、高頻度の給水で、低頻度の給水よりも大きい傾向があった。種ごとの解析では、ギョウギシバに対する給水頻度の効果は他3種に比較して小さいことが示唆された。地下部重量は、高頻度の給水で、低頻度の給水よりも大きい傾向があった。種ごとの解析では、ホソムギ、ギョウギシバに対する給水頻度の効果は有意に認められなかった。シロツメクサに対する給水頻度の効果は生育密度によって変化し、高密度下で顕著だった。
高頻度の給水により、水の安定的利用が可能となり、植物の成長が増加したと考えられる。その傾向は、種を通して共通している。しかし、一方で、給水頻度の効果の強さや他要因との相互作用の強さには種間差異が存在することが示唆された。