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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-465

印旛沼におけるツボカビを含めた真菌類の検出

天野陽介(東邦大・理)


近年、湖沼の生態系において、植物プランクトン寄生性のツボカビが重要な役割を果たす事が明らかになってきた。しかし、ツボカビをはじめ、湖沼における真菌類の動態は未解明なものが多い。そこで本研究では、日本で最も富栄養な湖である印旛沼(千葉県)において、蛍光染色法と分子生物学的手法を併用し、ツボカビを含めた真菌類の出現パターンを把握する事を目的とした。

2008年5月から8月の間、2週間に1回、西印旛沼にて、湖水そのままと、プランクトンネット(100μm)で濃縮した植物プランクトンサンプルを採取した。植物プランクトンに寄生しているツボカビはキチン質を染色するCalcofluor Whiteを用いて、蛍光顕微鏡下で観察、計数した。同時に、真菌類の18SrRNAをターゲットにしたプライマーを用いてDNAを増幅させ、DGGE法(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法)により、出現種数と種ごとの季節消長パターンを把握した。 DGGE法で検出された種類については、シークエンスにて塩基配列を決定し、BLAST検索にて種名を推定した。

5月から7月にかけて珪藻 Aulacoseira granulataが優占的に出現し、それに寄生するツボカビが顕微鏡下で観察された。このツボカビは珪藻が減衰した7月下旬以降は観察されなかった。DGGE法及びシークエンスの結果、西印旛沼に多様な真菌類が存在し季節によって出現する種が異なることが明らかになった。また、検出された真菌類の多くはツボカビであった。これらツボカビには珪藻に寄生する種類に加え、その他の生物に寄生する種類や分解性の種類も含まれた。

今後は、寄生性及び分解性のツボカビ全てを考慮に入れた湖沼生態系の解析が必要であると考えられた。


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