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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-469

植生の違いが湿原泥炭層における微生物群集の分布特性に及ぼす影響

*秋山 克,清水 了,石島洋二(幌延地圏環境研究所),長沼 毅(広島大院・生物圏科学)


北海道北部に位置するサロベツ湿原では、放水路の設置等による地下水位の低下が見られ、それに伴う湿原の乾燥化と植生変化が懸念されている。さらに地下の微生物相や生物地球化学過程も影響を受けることが想定され、サロベツ湿原における物質循環の特徴を明らかにするために、地下微生物群集の構造と機能に関する基礎調査を行っている。

湿原へのササ植生などの侵入は、泥炭層への有機物投入量の増大、根圏の拡大に伴う酸化的環境の拡大などをもたらす。植生を環境因子の一つとして捉え、泥炭層の微生物群集に及ぼす影響を評価することは、湿原の乾燥化や地球温暖化などの環境変動に伴って、泥炭層で変化しうる物質循環を理解するのに資するものと考える。本研究では、植生の差異が泥炭層の微生物群集の分布特性に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、被覆植生の異なる泥炭層を対象とした微生物群集の構造解析ならびに微生物遺伝子の定量解析を行った。

サロベツ湿原において、ミズゴケあるいはササが被覆植生となっている地点の深さ50cm分の泥炭コア(直径50mm)をそれぞれ異なる3地点から採取した。各コアの深度10、30、50cmの泥炭について16S rRNA遺伝子を対象としたDGGE解析を行った。一方、各コアから2.5cm間隔で得られた21深度の泥炭について、バクテリアおよびアーキアの16S rRNA遺伝子、ならびにメタン生成酵素遺伝子(mcrA)、メタン酸化酵素遺伝子(pmoA)を対象とした定量PCR解析を実施した。サロベツ湿原の比較対照湿原として、同緯度の山地に形成された中の峰平湿原についても2種類の植生から泥炭を採取し、同様の試験に供した。

本講演では、上記の解析結果をふまえ、植生の変化と微生物群集構造との関連性について議論する。


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