ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-478
*片岡陽介(信大・理),乾陽子(大教大・教育),市岡孝朗(京大・人環),Swee-Peck Quek(FAS Center for Systems Biology, Harvard Univ.),上田昇平(信大・理),市野隆雄(信大・理)
東南アジアに生息するオオバギ属(Macaranga)植物とDecacrema亜属のアリは絶対共生関係にあり、両者間の種特異性は高いことが知られている。この高い種特異性は、女王アリが適切な寄主植物を営巣時に選択することで促進されると考えられる。実生内にいた女王種の予備調査からも、実生に入る時点で高い種特異性が獲得されていることが分かった。Inui et al. (2001)は、オオバギの実生に営巣していた無翅の女王アリを用いて、それぞれの女王アリがオオバギ表面の化学物質を認識し適切なパートナー種を選択することを示した。しかし、自然状態においてオオバギの実生に営巣するのは、交尾済みで翅を持ち、かつ営巣経験の無い新女王である。
本研究では、営巣経験の無い新女王であっても、本来のパートナーである寄主植物種を選択できるのかどうかを検証した。ただし、交尾済みでかつ新コロニーを創設しようとしている有翅新女王は採取が困難なため、オオバギ成木(コロニー)内にいた有翅新女王を用いた。Inui et al. (2001)と同様にそれぞれの実生種に女王アリを乗せ、それが営巣するかどうかを実験したところ、「営巣経験無し」の新女王も本来のパートナーの上では即座に営巣の反応を示した。「営巣経験有り」の女王と同様に、成木内にいる「営巣経験無し」の女王も適切なパートナーを選んで営巣しうることが分かった。また、本研究で用いた女王アリが交尾を経験しているか否かも今後検証する。もしこれが「交尾済み」であれば、アリの巣内交配を示唆するものであり、「未交尾」であれば処女女王アリが営巣行動を起こすことが示唆される。