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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-481

アオモンイトトンボの雌における体色と生活史形質の表現型相関

*高橋佑磨,渡辺 守(筑波大・院・生命環境)


アオモンイトトンボの雌には色彩2型(オス型とメス型)が出現し、雄の性的干渉が選択圧となる負の頻度依存選択のもとで維持されている。これまで、地域個体群内の2型比に地理的変異や時間的変異の存在が知られてきたが、2型比の動態に影響する色彩型の発現様式や型間の生活史戦略の差異は明らかにされてこなかった。本研究では、本種の雌の色彩型の遺伝的背景を調べるとともに、雌の色彩と生活史形質の関連を調べた。室内で両型の雌を用いて交配実験を行なったところ、羽化した雌成虫の色彩の分離比から、本種の雌の色彩型は1遺伝子座の2対立遺伝子によって決定する遺伝様式をもっていることが示された。羽化した成虫の体サイズには型間で差がなかったが、羽化直後の雌を解剖して卵巣内の卵の数を測定したところ、オス型は約4800個、メス型は約4100個の未成熟卵を保有していることがわかった。これらの雌に充分な量の餌を与えて飼育すると、両型とも、羽化後4日目から卵の成熟を開始し、同時に交尾や産卵も行なうようになった。これは、型間で性的に成熟するまでの期間に差のないことを示唆している。成熟雌の生産する成熟卵の体積はオス型のほうが有意に小さく、結果として成熟卵の最大積載数はオス型のほうが多くなっていた。これらの結果は、繁殖開始までの日数には型間で差が認められないものの、オス型が小卵多産的、メス型が大卵少産的な生活史形質をもつことを示している。一般に、このような体色と生活史戦略の表現型相関は、色彩遺伝子の多面発現や、各形質遺伝子の連鎖不平衡、複数形質の適応的な組み合わせを選択する相関選択などの機構によって生じると考えられる。本講演では、本種における色彩と生活史戦略の表現型相関の適応的意義を考察するとともに、生活史戦略の観点から雌の2型比の進化的動態や地理的変異について議論する。


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